今回は、精子のお話です。
卵子は、一回の排卵で通常一個の卵しか出ませんが、精子は、一回の射精で数億匹が出されます。精子が、睾丸の中で大元の細胞(精祖細胞)から精子となるまでには、約74日間かかります。これら精子は精巣上体というところに約2週間蓄えられ、射精のときに一気に放出されます。精子の長さは約50μmで、ほとんどが核で出来ている頭に、長い尻尾が付いています。頭の先には、先体と呼ばれる部分があり、ここにはいろいろな酵素が入っていて、この酵素は、卵の卵丘細胞や、透明帯を通過するのに必要なものです。
体外受精では、一つの卵子に約10万匹の精子をかけてあげるのですが、かけてからしばらくした後、卵を見てみると、周りの卵丘細胞が精子の酵素で溶かされて、もろもろになっているのがわかります。

たま子『・・先輩、夫も子供もある身で、それはまずいですよ。』
受精卵という、新しい核を持ったひとつの細胞が、2細胞→4細胞→・・・と、分裂を始め、細胞を増やしていきます。
これは、途中までは受精卵と体積が変わらないため、割球ひとつ、ひとつが小さくなっていきます。
やがて、何分割かの後、割球は融合し始め、その境目がなくなって来てひとつの塊の様になります。
桑の実のように見えるため、桑実胚と言われています。
やがて、この桑実胚は大きく膨らんで行き、胚盤胞というかたちになって行くのですが、そのお話はまた後日。

トワ子『今年は、私の年ね。』
たまこ『何の事ですか?先輩。』
トワ子『この前、芥川賞の発表があったでしょう?その中のひとりで、朝吹真理子さんという方が受賞したんだけど、その「きことわ」ていう作品の中に、永遠子ていう主人公がでてくるの。絶対私の名前から取ったんだわ。』
たまこ『・・・。』
新年明けましておめでとうございます。
培養室のトワ子です。
今年も、培養のことやいろいろな事を、なるべく分かり易く、なるべくおもしろく、紹介させていただきますね。
今年もどうぞよろしくお願いします。
初潮を迎えてから30〜40年、毎月排卵し月経を迎えます。
女性は一生のうちに400個の卵を排卵すると言われています。
でも実は女性がお腹に抱えている卵は、出生時なんと200万個。
そのうちの400個というと全体のたったの0.02%しか排卵されないということです。
卵子にX染色体を持つ精子が進入し受精すると、♀の子の受精卵となります。
♀の子の受精卵は、受精後24日目ごろから卵子のもととなる細胞を作り始めます。
そこから爆発的に数を増やし、5ヶ月(胎齢)の時に人生最大の卵子数700万個となります。
たま子『700万個ですか!?じゃあわたしたち1人1人って700万分の1の確率で生まれてこれたんですね!!』
トワ子『フッフッ、甘いわね。人は卵子と精子の合体で出来てるんだからそこに精子の数も確率に関わってくるし、数億分の1×700万分の1の確率よ。わたしたち選ばれた人間なのよ。』
たま子『先輩、暗にご自分のことを言ってるんですか?』
トワ子『もちろん♪』
去る11月11,12日に、徳島で第55回日本生殖医学会があり、私達培養室からは、「採卵時未成熟卵子の成熟培養時間と胚発生の検討について」と、「発育遅延day2胚の有効利用についての検討」の2演題を発表しました。
石川から車で相乗りして行ったのですが、6時間ほどかかりました。旅立った日は凄い風雨でしたが、徳島ではずっとお天気も良く、温暖な気候が羨ましく思いました。

たま子『徳島って、なんでもスダチをかけるんですね。みそ汁や、お刺身にまでかかってますよ。』
トワ子『ちょっと驚いたけど、食べてみたら美味しいよ。』
たま子『スダチって、レモンよりもビタミンCが豊富で、美容にも老化予防にも良さそうですよ。・・・・・先輩、いきなり果肉まで食べるのやめて下さい。』
先日、2010年のノーベル医学賞に、イギリス人のRobert・G・Edwards氏が選ばれました。
世界初の試験管ベビーを誕生させた科学者です。
1978年7月25日に全世界の注目を集めて誕生したルイーズ・ブラウン嬢も、はや30才を越え、結婚後出産もしており、体外受精児が健康な子供を産めることも実証しています。
たま子『先輩、歳がばれますよ。私はまだ生まれていませんでしたから。』
トワ子『・・・。とにかく、この30数年の間に、全世界で400万人近くもの子供が、IVF(体外受精)でこの世に生を受けているのだから、倫理面での議論を除けば、体外受精は安全、安心な技術であることを証明してるわね。』